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終わらない空に

おそらく本編では書く場所ないであろう継承シーン
まあ、ここらへんはいろいろと考えているので本編でも詳しく出ますけどね。それとなく賢者の石編で書いてますし。
ちなみに題名は思いついたままのものなのでかなり適当です。



恒例ですが、おもしろかったら拍手どーぞ



 いつだって、平和が崩れるのは唐突だ。 

―終わらない空に―

 いくつもの声が耳の中に入って木霊する。鬱陶しい、うざい声。だけど聞いておかないといけない。なんとしてでも、ここから逃げ出す為に。
 何度も殴られたせいで切れた口の中の傷がしみて痛い。腫れた頬がずきずきする。薄く目を開いてみたけど、右の目は瞼が腫れあがっててうまく見えない。後で血を抜く必要があるな、なんてくだらない事を考えながらバレないように小さく息をはいた。痛みのおかげで気絶はしない。楽観的に考えろ、ラッキーなんだこれは。
 師匠、リボーンに言われた通りにそう自分に言い聞かせて。あたしはまだ正常に動いている耳だけで状況を確認する。とりあえず、一つだけ絶対な事が分かってる。最悪だ、って、事だ。
 敵に捕まった。護衛だってもちろん居たけど、その護衛3人が敵わない程の手だれだった。飾らずに言うと、瞬殺。流石のあたしでもこれを言っちゃうと衛その1~その3までが気の毒なのでちょっと控えたけど、まあ腹いせに罵るくらいは許されるだろう。きっと

※ただいま護衛その1~その3はイニシャルT・Sと守護者一同にフルボッコされております

 別に助けが来ない訳じゃないんだから、その助けを待てばいいと言うかもしれないけど。考えてもみて欲しい。恭弥兄や骸兄が、情けなくも捕まったあたしを普通に助けるだろうか? いや、ない。絶対にない。そんな事があるなんて天変地異の前触れ以外のなにものでもない。
 正直に言おう。
 あたしはまだ死にたくない。
(その為にはここからなんとしてでも死ぬ気で逃げないといけないのに……!)
 敵に隙が見当たらない。見張りは常に5人以上で全員が無線機装備。ついでにあたしの方は変な薬をかがされてロクに身動きが取れない。そんないたいけな女の子を痛めつけるマフィアなんて滅亡してしまえばいいと心の底から思った。後でこのファミリーは跡形もなく消滅させてやると固く誓ってあたしは幻覚でなんとか隠し通した嵐のリングに炎を灯し、すぐに消す。こんな小さい炎じゃ、嵐属性の特徴である分解能力はのぞめない。
 本当に、やりようがない。
 相手はあたしが起きている事には気付いていない。違う言い方をすればそれがあたしのメリット。幻覚でもう一度リングを隠して息をひそめた。
「現在のボンゴレの状況は?」
「不明。忍び込ませたモグラは徹底的に排除されてるみたいでして」
「流石だな……殺す相手は選んでる。
 で、誰が殺ってるんだ?」
 モグラを殺されてもこちらからの反撃理由にはならない。むしろ、なんてものを忍ばせてくれてんだコノヤローと向こうに反撃の理由を与える事になる。
 それを理解している幹部の誰かだろう、と問う今の見張りをまとめている男に、伝令を持ってきた男は少し言いよどんでから、それが……と言いにくそうに口を開いた。
「雲雀、恭弥です」
「なんだと!?」
 他の見張りもざわめいて、あの、という言葉が飛び交う。恭弥兄、よかったね。こんなにも群れてる草食動物達に恐れられてるよ。あたしも、小気味いい。
「六道 骸が動きましたっ!」
「獄寺 隼人の所在が掴めません!」
「笹川 了平がボンゴレ本部を出たとの情報が入りました! 3分前です!」
「山本 武、8分前から行方不明!」
 いくつもの情報が飛び交う。あたしはそれらを整理して、1つの憶測を導き出す。
 多分だけど、予想だけど。全員、かなりキレてる。それも普通のキレ方じゃない。会った敵から殲滅するような、そんな感じだ。あーあ、起こしちゃいけない獣起こしちゃって。
 切れ掛かっていた薬が、大分切れてくるのを確認してあたしはもう一度嵐の炎を出す。今度は、うまくいった。ほくそ笑んで、あたしは両手を拘束する手錠を分解する。そっと、そっと、バレないように。
「雷の守護者は!?」
「本部で司令塔をしているとの情報あり!」
「アルコバレーノ達はどうなってる!」
「分かりません!」
 分かる訳がない。リボーンも、ラルも、コロネロも。みんな頭がよくて情報隠蔽も得意だ。ヴァリアーが動いてないのが気になるけど、それよりもさっさと分解してしまおう。鎖がゆっくりと形を崩していっている。
 父さんも、きっと動いてる。あの、一番動向を掴ませない骸兄が動いたんだから。やろうと思えば誰にも自分の行動を掴ませずに動ける父さんが動いてない訳がない。超直感をフル利用するあの隠れ方はあたしにはまだマネできないものだ。
 ――君なら、オレよりずっとうまくできるよ。
    ダメツナのオレなんかより、ずっと才能がある――
 そう言って、父さんは笑ったけど。
 無理だよ、とあたしは心の中で弱音を呟く。あたしには無理だ。だって、全然超直感を使いこなせてないじゃんか。こんな事考えてるなんて師匠に知られたら後が怖いなぁ。
 ちゃら、という小さな音がしてあたしは物思いから意識を現実に戻す。鎖が切れた。これで、逃げられる。薬はほとんど抜けたし、幸いリングは嵐と大空(父さんから期間限定で借りたボンゴレリグだ)が残ってる。他のリングは逃げながら探せばいいさ。いや、ここの見張りに訊いた方が早いか。
 くつ、と喉の奥で笑う。まるでリボーンみたいだ、なんてどうでもいいくだらない事を考えて、あたしは嵐の炎を大きく灯して足の枷を焼ききった。
「このあたしが、優しく完璧に堕として巡らして」
 驚愕を顔に貼り付ける男達。さて、どんな風に料理してあげようか。
「咬み殺してあげる」
 笑顔で、あたしは宣言した。

********************

「10代目は?」
「もう動いたようですね」
 獄寺 隼人はそうか、と部下に返して手の中で自分の武器であるダイナマイトを弄ぶ。その指にはボンゴレリングが嵌っており、一歩間違えれば自滅しそうなものだったがそんな事ありえないという事は周りにいる部下達が一番分かっていたので何もしないし何も言わない。
 その嵐のボンゴレリングで、くわえていたタバコに火をつけた。少し先が分解されたが、気にせずに煙を肺の中に吸い込む。妻のハルに言われて少しは控えるようにしているが、中学時代からのスモーカーとしてはこのタバコの煙というのは心を落ち着かせてくれるのだ。××が誘拐された、という現実で揺らぎ高ぶり怒り狂うこの心を。
「行くぞてめぇら」
『si』
 右腕らしく――ほとんどツナの前では見せる事のないその顔で――隼人は部下達に命じた。

 ぶん、という音と共に、それは竹刀に姿を戻す。ふぃー、と息を吐き出して慣れた風に布製の鞘に普通の竹刀よりもかなり重い鋼鉄製の竹刀をしまった。
 その周囲に倒れ付すのは敵の下っ端達。その鮮やかな手並みを見た裏路地の住人は震え上がって伝令を急いで回す事にいそしんだ。内容は、あいつだけには手を出すな。時たまこの裏路地を通る男だったが、これ程強いとは誰も思っていなかったのだ。
 当然といえばそうだった。裏路地は危険なのだ。鼻歌混じりにいつも歩いてはいるが、決して警戒しない訳ではない。そして、それを誰にも悟らせないようにするくらいの事は男にもできた。
「ここ、どこだっけ?」
 先程の下っ端に聞けばよかった、と今更少し後悔した。だがすぐに立ち直って勘だけで行く方向を決める。気楽すぎるこの行動が、意外にも敵に動向を掴ませないのだから世の中分からないものである。マフィアごっこではないと気付きはしたが、遊び感覚が抜けきった訳ではないのだから楽しませてもらおう、と決め。
 山本 武は巨大なビルの方向に足を進めた。

「ここの、ようですね」
 深い青がかった黒髪が強い風になびく。それを気にした風もなく、男はそのビルを見下ろした。
「ったく、世話のかかる女びょん」
「仕方ないよ、犬。
 今回××が襲われたのはボンゴレのシマだ。襲われるなんて普通は考えない」
「それくらい分かってるびょん!」
「なら、いいけど……」
 城島 犬と柿本 千種のやり取りを横目に、男はただそのビルを見下ろす。全ての階に明かりが明々と灯されている。向こうも、警戒しているという事だろう。
「行くんですか? 骸様」
「ええ」
 クフフ、と笑い。霧の守護者である六道 骸は同じく表上の霧の守護者、クローム 髑髏をそのオッドアイで見た。
「乗り込みますよ。クローム、犬、千種」
『はい』
 全員の返事が重なり。フレイムシューズで空を飛んでいた一同は風の中を縫うように下を目指した。

「へぇ、その情報、間違いは?」
「ありません」
「なら、行こうか」
「へい」
 本部より回されてくるザコを咬み殺していた黒髪の男は、部下にして側近のようなものであるリーゼントの男の報告に肉食動物の笑みを浮かべる。足元の男――一応気絶――を蹴り飛ばしてから、男は血色の足跡を残しその方向に向かう。今教えた、敵のアジトの方向へ。
「今からですか?」
「モグラの処理なんて誰にでもできるだろう?
 あの子の救出が、僕にとっての最優先事項だよ」
 側近、草壁 哲矢の問いに少し機嫌を損ねたように言う男。すみません、とすぐさま頭を下げて、草壁は男を見送った。
「気をつけて、恭さん」
「余計な心配だよ、哲」
 雲の守護者、雲雀 恭弥は喉の奥で笑ってトンファーを匣にしまいビルに向かって歩き出した。
 幸か不幸か。本人はそれが望まぬ助けである事を知らない。

 轟音と共に男は壁に打ち付けられて、そのまま建物ごと崩壊しその瓦礫の中に埋まる。構えをといて周囲に転がる連中を殴り飛ばした男は、むぅ、と唸り相棒の漢我流を匣にしまってから呟いた。
「ザコばかりとはどういう事だ」
 ひたすら目立つ戦い方するからだ、とツッコむ者はここには誰もいない。明るい晴の炎はとにかく目立つ。しかもこの晴の守護者である笹川 了平の戦い方はとにかく派手な為、どうしても誘蛾灯のようになってしまうのだ。だが、ある程度それは本人も自覚している。だから、わざと派手に戦いもする。
「極限不満だが、××の為だからな」
 うんうん、と1人頷き、出てきた敵に向かって拳を構えた。乗り込むのは他の者達に任せればいい。自分はこうして、ザコを引き付けておくのが仕事なのだから。
「こいっ!」
 ただ、言ってしまうと。
 今回了平は道に迷ってしまっていたりもする。

「モグラを発見! どうしますか!?」
「適当な奴に回してくれ! 雲雀氏はどうなってる!?」
「すでに出た模様です!」
 一方、ボンゴレ本部では雷の守護者であるランボが必死に情報統制をしていた。ここで情報を集めて、守護者達の持つ端末に送る。それが今回、ランボに任された仕事だった。
 モグラ――つまりスパイだ――の発見と駆除。守護者達の居場所を割り出し安全で的確な敵の本拠地へのルートの割り出し。裏方ではあるが、舞台でいうBGMや大道具と同じ、一番大切な仕事でもあった。もちろんそれを、ランボも理解していた。
「情報をもっと早く回せ! オレ達の戦場はなんだ!」
 この頑張りやな守護者を慕う者が多いのは、ドン・ボンゴレ沢田 綱吉しか知らぬ事である。

 少しいつもよりも強い風に、重力やら引力やらの法則を無視した髪がかき乱される。意外と柔らかなそれは風になびき、揺られて青年自身の手で元通りに戻された。
 青年が機嫌よく――と言ってもそう見えるだけだが――歩くのは繁華街。と言うには少しアレな雰囲気か。もう少し的確に言うならば『花街』、か。女に見向きもせずすたすたと歩く青年――こちらもそう見えるだけで実際年齢は三十路――をそこの女達は悔しげに見送る。白いスーツの仕立てや、その装飾品から見て青年はかなりの金持ちだと容易に想像できる。女達からしてみれば是非声をかけて欲しい客だというのに本人は見向きもしないのだからこれが悔しくなくてなんなのだろうか。かと言って青年に行き着けの女がいる訳では決してない。ただ、通り道として青年は使っているだけなのだ。
(待ってて、××……)
 夜闇に高く聳え立つビルを見上げて、青年……ボンゴレ10代目にして再来の大空と謳われる者。沢田 綱吉は口元を引き上げる。
(今、助けるから)
 その唇に刻まれた笑みは、凄絶だった。

********************

「あたしの武器はどこ?」
「ひ、ひぃっ! 助け、もう許し……!」
「そんな事訊いちゃいないのよ。あたしの、武器は、どこ?」
 人の話を聞かない見張りのまとめ役だった男をシメあげて、一言一言区切ってあたしは問いかける。またもや小さな悲鳴を上げて武器のある部屋の場所を素直に教える男。まあ、怯えるのも仕方ないと言えばそうなのだろう。こんな幼い、しかも武器すら持たない子供にこてんぱんに叩きのめされたんだから。情けない。こんな部下、あたしなら欲しくはない。
 教えたから許してくれ、自分は命令されただけなんだと喚く男の首筋に手刀を叩き込んであたしはもう一度眠らせる。本当に情けない。なんでこんなのにおとなしく殴られてたんだろ、あたし。
 その男が持ってた短剣を鞘から引き抜いて、毒などを塗ってないかを丹念に調べてからあたしは右目の瞼を浅く斬り血を抜く。同じ要領で腫れあがっている部分の血を抜いて、同じく男が持っていた応急処置の道具で簡単に止血し包帯を巻く。右目は後で了平兄に治してもらった方がいいだろう。
「ルッスがいたらねぇ」
 あのクジャクで治してもらえるんだろうけど。まあ、そこまで求めるのはダメだろう。今ルッスーリアはメキシコの方に個人の暗殺依頼を受けて出張中だ。あのクジャク便利は便利なんだけど、治してもらった後に髪と爪が伸びるのはいただけない。あれがなければ最高なのに。
「ま、行きますか」
 部屋を出て、言われた通りの道順を行く。あの状態で嘘教えるような人間は普通いない。いるとしてもあたしは守護者のみんなとヴァリアー幹部のみんなしか思いつかない。負けましたぁっ! とか言いながら平然と嘘教えるような連中だあれは。
 言われた通りの場所に部屋はあり。もちろん鍵はかかっていたのでそれを焼ききってからあたしは部屋の中に入る。机の上に無造作に置かれた鎖鎌とリングに少しイラっときた。これらがどれだけマフィア界で貴重なものなのか分かってんのかね、あの親父は(さっき叩きのめした奴ね)。分かってないんだろうな、と思いながら鎖鎌を所定位置のベルトの裏に戻してリングを指に嵌めた。
 匣もそこにあって、またその中には瓜の匣が紛れ込んでいた。たまにあるんだよねー、瓜が自分で運んでその中勝手に入るからなんだけど。
「出ておいで、瓜」
 嵐の炎を使って匣を開匣すると、耳に嵐の炎を纏わせたヤマネコが出てきた。正式名称嵐猫ガット・テンペスタと言う嵐属性にして晴の炎がないと完璧には使いこなせないという厄介なアニマル系の匣。隼人兄に瓜と名づけられている。多分色合い。
「ちょーっと、あたしだけじゃ逃げれそうにないのよね」
 ひょん、と瓜は首を傾げる。歩くのにさほど支障はないけど、正直戦闘でこの傷はキツイ。骨折とか大きいケガがない分、打撲とかはかなり多いし走るだけでもずきずき痛む。戦えるとは思うけど、逃げるとなるとかなりの人数を相手にしなきゃならないんだからそう考えるとあたし1人では無理だろう。
「手伝ってくれる?」
 当たり前、と言う風にこくんと頷いて瓜はあたしの肩に乗る。ホント、なんで隼人兄には懐かないのかな? ああ、隼人兄が目の前で失礼な事言うからか。どうせ懐かない、とか、この暴れ猫、だとか。うん、そりゃあ懐かないな。
 基本、敵は瓜に任せてあたしは直感でできるだけ敵のいない道を選びながら階段を見つけ出す。今いるのは上空数百mという場所。つまりビルの上の方だ。窓から飛び降りてもいいんだけど、イタリアの人達だってマフィアを知らない人が多いんだからそれは却下。あたしの大空の炎はあまりにも目立ちすぎる。だから、こうやって地道に降りてるんだけど。
 たまには道も間違うし敵も多いので中々進めなかった。うっわー、なんか向こうの方で黄色い明かり見えるし。あれ絶対了平兄の炎だよね? 晴属性の。敵がわらわらそっちに向かってくのが見えて人数はかなりのもの。なのにこれだけの人数がここに居るのだから部下の数は多いらしい、このマフィア。いや、このファミリーはあたしも知ってるものだから、別にそんなに驚く事じゃないんだろうけど。3代も続いてきたそれなりに大きいマフィアだ。こんな暴挙に出たのが信じられないくらいに、あたしとしても好感のもてるボスで、同時にこのファミリーとは意見が合わずにボンゴレは何度も衝突している。
 さらに階段を下りると、半ばくらいにあったと記憶しているダンスホールに到着した。中世じゃないんだからさ、と思ったあたしは普通だと思う。だってダンスホール。普通にありえないだろう。
 その真ん中にある豪奢なイスに座っている男が1人。あたしも、その人には見覚えがあった。
「……3代目」
「久方ぶりだね、11代目殿」
 穏やかに笑う、このファミリーの3代目。何度もボンゴレと衝突しながらも、ボンゴレと敵対だけはしなかった賢い人。そう、賢い人なのだ。こんな、あたしを誘拐だなんてする人じゃない。何度か話もしたし世話になった事もあるけど、いい人だった。だからあたしは分からない。
「どうして……」
「私達と、あなた方ボンゴレの歩む道は決定的に違う。
 なら、今のうちのどちらかが消えておいた方がいいだろう? 私にも、どちらが正しいかくらいは分かるつもりだ」
 自分達とボンゴレではボンゴレの描く理想の方が正しいから、だから自滅の道を選んだ、と。そう言うのだろうか。抗争になってしまえば、幾人もの無関係な人達の命が失われる。このファミリーも民間人を大切にするファミリーだったから、だからそんな事が起きない為に?
 そんな自己犠牲の精神、マフィアにはあまりにも似つかないものだ。
 あたし達はどこまでも独善的に生きていくべきなのだ。自分が正しいと胸を張り、その正しさを他人に押し付けて生きなければならない。そういう、在り方でなければ生き残れはしない。それがマフィアだ。それが、犯罪集団としての義務だ。少なくとも、あたしはリボーンにそう教えられた。何があっても、何が起こっても、何度その想い折られようとも。胸だけは張り続けろ、と。
「バカでしょう」
 あたしが苦笑すると、3代目は苦笑を返してくる。
 この人は、マフィアにはなりきれなかったんだ。だから、ここで消える。ここはそんなセカイだ。それを今、改めて思い知らされた。
「さあ、はじめよう」
 言って、3代目は己の武器であるダガーを構えた。

 一階に最初響き渡ったのは爆発音だった。嵐の属性の赤い炎が溢れ、火蓋はおとされた。
 雨を纏う男が嵐と共に現れて、笑った。
「行くか、獄寺」
「足手まといにだけはなるんじゃねぇぞ、山本」
 互いが互いの武器を見せあい、ボンゴレリングに炎を灯した。

「君と一緒ですか」
「それは僕のセリフだよ。なんで君がここに居るの?」
「ここが、一番見張りが手薄だったから……」
「そんな事どっちも分かってると思うから言わなくていいよ、クローム」
 まず最初に文句を言ったのは骸。同じく不機嫌そうに言ったのは雲雀。ぼそりと説明を入れたのがクロームでそれを止めたのが千種。犬は雲雀に殴られてクロームに看病されている。
「いたぞっ!」
 やってきた男達を雲雀と骸は無感動な目で見つめて、顔を見合わせた。
「今回だけ」
「手を組もうか」
 最上階を、濃霧が覆った。

「極限っ!」
 こっちはこっちで誘蛾灯を頑張っていた。

 はう、と一息ついて、ハッキングで盗んできた敵アジトの地図を出て行った全員の端末に送りランボはようやっと背もたれに背を預けた。これで、こっちの仕事は終わった。
「お疲れ」
「そちらこそ。お疲れ様です、ランボ様」
 後は前線のみんなに任せればいい。あの人達がしくじる可能性など、万に一つもありえない。

「お前もここからか、ツナ」
「リボーン……コロネロに、ラルまで」
 くい、とボルサリーノのつばを銃口で持ち上げて、リボーンは口元だけで笑う。後ろではコロネロとラル・ミルチが爆薬の量を調節していた。
「乗り込むなら意表をつけ。ちゃんと教えを守ってるみてぇだな」
「教えたのはリボーンだろ」
 ひょい、と肩をすくめて。綱吉は目を閉じた。
 死ぬ気モードになるのに、すでに道具の助けを必要とはしなくなった。目を閉じて、死ぬ気弾か小言弾を撃たれる感覚を思い出せばいい。それだけで、額に炎は燃え上がる。
「行くぞ」
「急にえばんな」
 くつ、と笑って。リボーンは2人に合図する。
 意地悪い笑みを浮かべてコロネロがボタンを押し。壁が爆発すると同時に4人は乗り込んだ。
「反撃開始だ。オレが許す」
『si』
 綱吉の言葉に、3つの声が重なった。

 いつの間にか。
 あたしの目の前には血まみれの3代目が横たわっていて、虫の息で生きながらもあたしを見ていた。あたしが、ここまでこの人を追い込んだという自覚があまりなかった。正直、我武者羅にあたしは戦っていた。
「きみ、に……」
 はっ、と。ようやく我に返ってあたしは3代目の言葉に耳を傾けた。
「わたしを、ころしたつみを……せおわす、つもりはない、よ」
 そう言い笑って、3代目は持っていたダガーで自分の胸を貫いて。
「     」
 そっと一言を唇の動きだけで呟いて――それをあたしに読唇術で読み取らせて――息を穏やかに引き取った。死に顔はとても安らかで、どうして、とあたしはもう一度呟いた。
「どうして、あたしはこんなに無力なのよ……」
 右手の中指にあるボンゴレリングに炎を灯してみる。純度は、父さんには遠く及ばない。それどころか、3代目にすら及ばなかった。あたしの炎の純度は、それ程までに低い。
「何が望みだって言うのよっ! 覚悟は捧げたでしょう!? 願いを覚悟に変えて、覚悟を炎にあたしは戦ってる! これ以上、何を祈れって言うのよっ!!」
 何かにすがるようなあたしの言葉。それに応えるようにボンゴレリングが光を放って、同時にあたしの目の前が暗闇に閉ざされた。何が起こったのかを理解できずにあたしは周囲を見渡す。やっぱり、暗い。
 ボンゴレリングから溢れた光があたしの額に手を伸ばして。暗闇の中にいくつもの映像が浮かび上がった。
 命乞いをする者がいた。その命乞いを嘲笑って引き金をひく者がいた。子供を助けようと必死になる者がいた。その人の目の前で、子供を先に殺してその人も殺す者がいた。薬に侵されながら、それでも生きようとする者に絶望の言葉を吹き込んでいたぶってから命を奪う者がいた。家族がいるから助けてくれ、と言った者に、お前の家族も殺すから安心しろと言ってから殺す者がいた。
「な、に……これ……」
 目の前に映し出されるいくつもの惨劇。残酷に殺されていく人達。残酷に殺していく人達。その全てが、目を閉じても頭の中に流れ込んでくる。
『ボンゴレの、業』
 知らない人の声に、あたしは顔をあげる。目元に炎の仮面を被ったいくつもの人影が、いつの間にか目の前にいた。
『大空のボンゴレリングを継ぐ者よ。貴様に覚悟はあろうな』
「何、言って……」
『この業を、引き継ぐ覚悟が』
 引き継ぐって、それじゃあ、あたしがこれをするって事? こんな酷い事を……あたし、が?
 頭の中に流れ込んでくる映像は止まらない。むしろ、そのむごさを増していく。音声までがついてきて、いくつもの悲鳴と悲しみと憎悪と。そんな声があたしの頭を直接おかす。
「や、だ…こんな、の…・・・やだぁっ!」
 零れ落ちる涙を止められるはずがなかった。辛い? 悲しい? そんな気持ち以前の問題で、いくつもの映像に気が遠くなる。
『目をそらすな。これはボンゴレを継ぐ者の宿命』
『代価を払わずして何かを手に入れることは叶わぬ』
『偉大なる力が欲しければ、偉大なる歴史を継承する覚悟が必要なのだ』
 あたしは、人影達の言葉に何かがキレるのを感じた。
 何が、宿命だ。何が、代価だ。何が、偉大だ。
「この歴史のどこが偉大よ! 力はそりゃあ偉大かもしれないけどね、この歴史が偉大だなんてあたしは認めない!! こんな間違った歴史の上に成り立つ力なんて、あたしは欲しくないっ!!!」
 驚愕が、人影達の中にはしった。
「人殺しを偉大の一言で正当化するな! 間違いは間違いとして受け止めて進め! それがあったからボンゴレが成長したんだとしても、それでもこの歴史を正当化する事だけは認めない! 認められない!! こんな、間違ったものがまかり通るこんなセカイ、あたしが……!」
 決めたんだ。お母さんを、失ったあの日。
「あたしが、変えてみせる!!!」
 間違ったセカイを、変えるんだって。
 暗かった視界がはじけて、空の蒼一色に塗りつぶされる。
父娘おやこ揃って傑物だな」
 苦笑混じりの言葉。一番奥の玉座に座る、父さんのカラーリング変えたような、それでいて父さんとは違い闇のにおいを濃厚に漂わせる男。あたしは直感で悟った。彼が、初代ボンゴレなのだと。
「お前の父はボンゴレの革命を望んだ。そしてお前は、セカイの革命を望むか」
「当然よ」
 胸を張って。リボーンに教えられた通りにそうして、あたしはジョットを見据えた。
「誰かが無意味に死ぬなんて間違ってる。無関係の人が巻き込まれるなんておかしい。それが正しいなんて戯言がまかり通るこんなセカイ、変わらなきゃいけないのよ」
 くつ、と喉の奥で初代は笑う。
ⅩⅠ世ウンディチェーズィモ。お前にボンゴレの証を継承する、と言いたいところだが」
 あたしをしげしげと見つめて、ジョットはこんな事を言いやがった。
「お前はまだ若い。お前が今から生きる時間は、お前が心変わりするには十分すぎるものだろう。一応証は継承する。
 だが、仮の決定だ。もう一度、お前をオレ達は試す。
 その時も今と同じ、もしくはそれ以上の答えが出せたのなら……」
 あたしの足元にボンゴレの紋章が広がる。それがあたしの中に吸い込まれると同時に、不思議な落下感があたしをおそった。
Ⅹ世デーチモ以上の存在と、お前はなるだろう」
 そこであたしの意識は途切れて。いつの間にか、あたしは父さんの背に揺られていた。


 ――ありがとう―ー
 3代目。あなたは、あたしにそう言いました。それは多分、自分の我が侭をきいてくれて、という意味だったのでしょう。だってあたしには、あなたと戦わないという選択肢があったにも関わらずそれを選ぶ事はなかったのだから。
 でも、だからこそ、一言だけ言わせて欲しい。
 言えばあなたはきっと、苦笑するのだろうけれど。



あたしは、ただの偽善者です、と。
















以上、終わらない空にでした。
ヒロインの継承シーン。実はこんな風だったという。裏で頑張る守護者と綱吉でしたが一応あんな感じで。あれはサブなのであまり詳しくは書きませんでした。
3代目大好きです。サブキャラで出すのが惜しいくらいに大好きです。あんないい人めったにいませんよ。なのにもう出てこないんだから悲しいものです。
これはいつ短編に移そうかなー。
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Author:冬弥
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基本放置してる生存確認用。Twitter見る方が息はわかる。

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